2026-02-25

歩み -Journey-

漆喰による表現は、まっすぐに始まったわけではありません。

2011年、天然石を扱うことからフリーランスとしての活動を始めました。石という自然素材に向き合うことが、現在の制作の原点です。

当時、生きる気力を失いかけている人たちから多くの相談を受ける中で、「生きる力は衣食住から」という言葉に出会いました。その言葉をきっかけに、「住」に関わる仕事を身につけたいと考えるようになります。

模索を続ける中で、石灰から漆喰をつくれることや地産地消の考え方など、さまざまな出会いと体験が重なりました。

そこから地域の素材を活かし町づくりへとつなげたいという思いが芽生え、拠点づくりにも挑戦しましたが、思うように進まず断念しました。

それでも「住」の基礎から学び直すことを選び、木造建築の一年課程へ進みました。

建築を学んだ後、土や漆喰を扱う左官会社に入りましたが、身体を痛め短期間で離れることになります。

その後は現代的な施工を主とする会社に所属し、現在も現場に立ちながら生活の基盤を築いています。

制作に取り入れている伝統的な左官技術は、組織の中で体系的に学んだのではなく、出会った職人の方々から個人的に教えを受け、少しずつ積み重ねています。

制作の道へ進むことを決めたのも、ひとつの出来事によるものではありません。偶然の出会いやいくつかの言葉に背中を押される経験が重なり、自ら選び直すようにしてアートの道へ歩みを進めました。

協働や企画にも関わりましたが、さまざまな経験を経て、最終的に選んだのは個人の表現として発表する道でした。

分野は変化してきましたが、一貫しているのは自然素材と向き合う姿勢です。天然石、石灰、漆喰。形は変わっても、素材への関心は途切れることなく続いてきました。

自然素材に触れ続ける中で、私は自然と人のあわいに身を置く感覚をあらためて意識するようになりました。その感覚は幼少期から、育った環境の中で自然と培われてきたものです。意識して身につけたというより、日々の中で静かに根づいていった感覚でした。

素材は自然の営みから生まれ、人の手によってかたちを与えられます。その境界に立ち現れるものを見つめ、そこから生まれる表現を探求しています。

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